サマータイム制導入という愚策

効果が疑わしく、費用が莫大なサマータイム制導入

今年は見送られましたが、エネルギー節約という名目でサマータイム制導入が今後も提唱されるおそれがあります。サマータイム制導入という愚策の息の根を止めるため、サマータイム制導入がなぜだめなのか、明らかにしておこうと思います。サマータイム制導入を愚策と呼ぶ理由は2点あります。

  • エネルギー節約の効果が疑わしい
  • サマータイム制導入の費用は莫大

サマータイム制導入はエネルギー節約には逆効果であるという報告がでているほど、サマータイム制導入のエネルギー節約効果は疑わしいものです。そして、サマータイム制導入の費用は以下に説明するように莫大なものがかかります。効果が疑わしく費用は莫大。これは愚策以外のなにものでもないでしょう。坂村教授が「サマータイム制は論外」と言っているのは不思議ではありません。

サマータイム制導入の費用は兆単位

サマータイム制導入を提唱している人たちはサマータイム制導入の費用を2桁か3桁くらい過小評価していると思われる節があります。実際、サマータイム制導入の提唱の際、費用の見積もりが提示されることはあまりありません。サマータイム制導入の費用は大したことはないと思っているからでしょう。

unnamed7さんは「10倍になることはないんじゃないですか?」なんていってますが,とんでもない。どう考えても桁は二つは大きいはずです。確実に。大手銀行なら,たぶん一行だけでも三百億円かかります(先日の三菱東京UFJ銀行のシステム統合費用でも2500億から3000億円かかってるんですよ。その10分の1ですめば幸運でしょう。)

Y2K(2000問題)の費用は、2兆円だったとも3兆円だったとも言われています。サマータイム制導入の費用もこの程度にはなると思われます。以前、以下のように書いたことがあります。

Y2Kより厄介な問題もある。Y2Kは日付のデータをどう扱うかというだけだった。それに対して、サマータイム導入となればサマータイムか否かという区別のためのデータがないと時間の計算が正しくできなくなる。そのため、二つの時刻のデータだけで時間を計算していたようなプログラムは、サマータイムか否かという区別のためのデータを追加する必要が生じる。

データは無からは生じないから、どこかでそのデータを与えてやる必要がある。そのため、プログラム全体に渡って変更する必要が生じるおそれがある。プログラムの変更箇所を局所化できたY2Kに比べ、プログラムの変更箇所が広い範囲に及ぶサマータイム制導入の方がプログラムの変更は厄介な面がある。

Y2Kの膨大なコストから類推すると、サマータイム制導入はとてもコストにあわない。

サマータイム制導入の費用を過小評価している原因の一つに欧米が導入していることがあるようです。

コンピューターシステムの切り替えは確かに大変でしょうけど、逆に言えばそこにビジネスが生まれるわけだし、欧米が対応できているのに、日本の優秀な技術者が対応できないわけはありません。

これは、20階建てのビルを建てることと10階建てのビルの上に継ぎ足して20階建てにすることが同じだというようなものです。サマータイム制対応のコンピュータシステムをゼロから作るのはさほど困難ではありませんが、サマータイム制未対応のコンピュータシステムをサマータイム制に対応させるのははるかに困難です。

ほとんど全てのコンピュータシステムの見直しが必要

サマータイム制導入には、時計やタイマーだけでなく、ほとんど全てのコンピュータシステムで見直しが必要となります。サマータイム制導入の費用は兆単位というのは、このためです。OS(オペレーティングシステム)の変更から必要になります。

最大の問題はコンピュータです。最新のオペレーティングシステムは、夏時間に対応しているので、アプリケーションはオペレーティングシステムの機能を正しく使っていれば、(アプリケーションの特性で、少し変更が必要だとしても)大きな問題はありません。

対応しているのは、あくまで既存のサマータイム制に対してのみであり、日本がサマータイム制を新しく導入しようとすれば、OS(オペレーティングシステム)の変更から必要になります。2007年にアメリカでサマータイム切り替え時期を早めただけでもOSの変更が必要になり、トラブルが発生しています。

米国で夏時間(Daylight-Saving Time:DST)が例年より3週間早く、3月11日からスタートしたが、Microsoftなど各社の製品で、正しい時間が適用されないなどの問題が多発した。