供給曲線は成り立たない(1)

suikyojin2005-01-25

需要曲線は成り立たない」と述べた。では、供給曲線はどうだろうか? 結論から言うと、需要曲線が成り立たない以上に供給曲線は成り立たない。なぜならば、供給曲線は「作ったものが全て売れるかのように行動する」ということを前提としているからである。

主流派の近代経済学では「企業は利潤を最大化するように行動する」と考える。供給曲線もこれを前提としている。この前提はとりあえず正しいとしておこう。企業における利潤と販売量の関係には以下のような式が成り立つ。

利潤 = 価格×販売量 − 生産費用

販売量は、需要量と生産量(供給量)とのどちらか小さい方で決まる。供給される以上に買うことはできないし、需要以上に売ることもできない。生産費用は、よほど特殊な条件がない限り生産量に応じて増える。したがって、生産量と利潤との関係は図のような山形の曲線となる。図の左側では生産量が不足しているために利潤が下がる。右側では生産量が過剰なために利潤が下がる。全く売れない場合は、生産量ゼロの時に利潤が最大(損失が最小)となる。このように、生産量だけでは利潤は決まらない。生産量だけで利潤が決まるかのように扱えるのは、図の左側の時だけである。図の右側では作れば作るほど利潤は低下する。

コンビニにおける弁当の廃棄が問題になるように、「売れ残り」は企業にとって重要な課題であり、「作ったものが全て売れるかのように行動する」ことなど、企業ではまず許されない。「ある程度の売れ残りのリスク」を考慮に入れるのは、もはや常識以前の問題である。