サルでもわかるデフレの害

デフレでは企業の利益が大きく減少する

デフレでは実質賃金が低下し、インフレでは実質賃金が上昇します。すなわち、デフレでは物価の低下より名目賃金の低下の方が激しく、インフレでは物価の上昇より名目賃金の上昇の方が激しいということです。

なお日本経済が「失われた20年」に突入する前のインフレが進んだ時期である1970年代や80年代の名目賃金(現金給与総額)と物価(消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合))の推移を見ると、名目賃金の伸びがインフレ率を上回っている。つまり名目賃金の伸びからインフレ率を差し引いた実質賃金はインフレが進んだ時期では上昇していた。

逆にデフレが始まった1998年以降は名目賃金の低下がインフレ率の低下を上回っている。つまり実質賃金は低下している。一時的に実質賃金が下落するリスクがあるからといってデフレからインフレに転換することが問題だということにはならない。安定的なインフレが持続することと実質賃金の上昇は両立することを改めて確認しておきたい。

なぜこのようなことが起きるかといえば、デフレでは企業の利益が大きく減少するからです。物価の低下より企業の利益の減少の方が激しいからです。赤字となるケースもでてきます。企業の利益が大きく減少するため、企業はそれを埋め合わせようとして、賃金を大きく下げるのです。

製品の価格は現時点の価格、設備や原材料の価格は昔の価格

デフレで企業の利益が大きく減少する理由は、経済活動には時間がかかるからです。製品の価格は現時点の価格でも、その製品に使用した製品の設備や原材料の価格は何ヶ月前、何年前の価格であり、デフレで下がった現時点の価格ではありません。全ての価格が均等に下がった場合でも、経済活動に時間がかかるため、製品の価格の方が設備や原材料の価格よりデフレの影響を大きく受けることになります。

デフレによるわずかな売り上げの減少でも利益は大きく減少する

製品の価格は現時点の価格なので売り上げはデフレにより減少しますが、製品のための設備や原材料の価格は昔の価格であるため、費用はデフレでもさほど減少しません。利益は売り上げと費用の差なので、デフレによるわずかな売り上げの減少でも利益が大きく減少することになります。売り上げが1%減少すると利益が数十%減少するというようなケースは珍しくありません。