デフレ脱却に失敗する最大の理由

デフレ脱却間際こそ利上げ、増税に最も不向き

すでに消費増税という「自己破壊的な政策」を実行に移したことで、日本経済は勢いを失い始めています。このままいけば、最悪の場合、日本がデフレ時代に逆戻りするかもしれない。そんな悪夢のシナリオが現実となる可能性が出てきました。

これまでデフレ、ディスインフレから脱却する機会は、何度かありました。しかし、ことごとく失敗し、ようやく、脱却しかけたところ、今回の消費税増税で再度デフレに陥る可能性が高くなっています。

実は日本の経済政策の歴史を振り返ると、経済が少しうまくいきだすと、すぐに逆戻りするような愚策に転向する傾向が見受けられます。

'90年代を思い出してください。バブル崩壊から立ち直りかけていたところで、財政再建を旗印に掲げて、日本の指導者は消費増税に舵を切りました。これで上向いていた経済は一気に失速し、日本はデフレ経済に突入していったのです。安倍政権がやっているのが当時と同じことだといえば、事の重大性をおわかり頂けるでしょう。

デフレ、ディスインフレから脱却する間際に、利上げや増税を行い、それまでの経済政策を元の木阿弥にしてしまっていました。
デフレ脱却間際こそ、細心の注意が必要で、ある意味、利上げや増税に最も不向きな時期なのです。

デフレ脱却間際は、デフレの害とインフレ率上昇の害が重なる

サルでもわかるデフレの害」でデフレの害を説明しましたが、あれは、あくまで、インフレ率が定常的である場合を想定していました。デフレから脱却するにはインフレ率が上昇しなければなりません。しかし、インフレ率の上昇も経済的な害があります。デフレ脱却間際は、デフレの害とインフレ率上昇の害が重なるため、最も苦しい時期になります。デフレ脱却への期待で何とか乗り越えようとしますが、利上げや増税があると必ずしも乗り越えられません。ボクサーがカウンターパンチを受けたようなものです。

インフレ率上昇は経済的に害がある

賃金の改定はほとんどの企業で1年単位です、そのため、賃金の上昇は、インフレ率の上昇に遅れます。インフレ率上昇は、実質賃金を低下させます。購買力も下がります。インフレになると、家計が苦しくなるとか言われるのは、通常、インフレの害ではなく、インフレ率上昇の害です。

デフレ脱却間際は実質賃金が下がるため、利上げや増税に脆弱

デフレ脱却間際は、インフレ率の上昇により実質賃金が低下します。デフレで低かった賃金がさらに低下します、デフレ脱却、景気回復への期待が、かろうじて、購買力も支えているような状態です。したがって、利上げや増税に脆弱です。

物価情勢については、足元で消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比が消費増税の影響を除いたベースで1%台前半まで上昇しており、背景として「需給ギャップと予想物価上昇率の改善」を挙げた。

名目賃金の上昇は、消費税増税の影響を除いた物価上昇に見合わないようなレベルにすぎず、消費税増税の影響を含めると、実質賃金は大きく低下しています。増税、それも家計を直撃する消費税増税というショックは大きすぎます。