同じ商品でも買い手は売り手を選択します。これは、取引条件の良い売り手を積極的に選択するという意味ではありません。同じ商品でも買い手は売り手を無意識的に選択してしまうということです。なお、ここでは、買い手が売り手より多い一般的な商品を仮定しています。また、買った後でしか売り手がわからず、買い手が売り手を選択できないような特殊な市場については、ここでは除外します。
買い手が売り手を選択している証拠は簡単です。同じ商品を複数購入する場合を考えてみれば十分です。売り手を選択していない場合ならば、n個の商品をn人の売り手から買うでしょう。しかし実際には、売り切れといった特殊な条件がない限り、単一の売り手からのみ買います。ほとんど無意識的に行うことであり、一般には選択していることを自覚しません。
また、相手をする売り手の数でも、売り手を選択していることがわかります。もし売り手を選択していないならば、経過する時間にほぼ比例して、相手をする売り手の数が増えるはずです。一年間に訪れる店の数は、一週間に訪れる店の数の50倍位になるはずです。
同じ商品でも買い手が売り手を選択する理由は簡単です。実は、ミクロ経済学で限界原理と呼ばれるもので説明できます。取引に付随する費用を含めた取引全体の費用を考え、その費用の限界費用を考えます。すると、買う数量を増やした時、同じ売り手から買う方が、異なる売り手から買うより、移動等の費用が節約できる分少なくなります。限界費用が少くなる方を選ぶという当然のことをしているだけです。
労働市場等、買い手が売り手より少ない場合は、逆で、売り手が買い手を選択することになります。ただし、これは、商品自体に優劣がないことが前提です。商品自体に優劣がある場合は、最も取引条件が良い商品を買い手は得ようとします。
(2022/12/24追記)
買い手や売り手と記述したのは、工場に対しては買い手、消費者に対しては売り手となる流通業者等を意識したためです。気になる方は、各々、需要家、供給者と読み替えて頂いて構わないはずです。