現実経済に均衡なんて成り立つのか?

現在のFRB議長であるバーナンキ中央銀行がインフレを起こせることを証明した、「バーナンキ背理法」が証明として充分か否かが話題になっている。

だが、そもそも、均衡モデルを現実経済に当てはめることができるのだろうか?

これを置き換えれば、「バーナンキ背理法」を完成するには、「均衡動学経路が実際存在する」ということを証明しなければならない。

均衡モデルを現実経済に当てはめることができなければ、それ以前の問題である。

均衡モデルを現実経済に当てはめようとすることは、ピタゴラスの定理を非ユークリッド幾何学で使おうとするようなもの

均衡モデルと現実経済とでは、前提条件が決定的に違う。均衡モデルを現実経済に当てはめようとすることは、ピタゴラスの定理を非ユークリッド幾何学で使おうとするようなもので、論理的に破綻してしまう。

現実経済では、市場全体の需要曲線が供給者の数だけ存在しうる

均衡モデルでは、移動のための費用*1が無視されているため、「販売する価格=支払う費用」となる。だが、現実経済では移動のための費用がかかるため、「販売する価格≠支払う費用」であり、しかも支払う費用は移動の距離等により異なるので、「販売する価格」を基にした需要曲線は、同じ需要家でも供給者毎に異なることになる。したがって、現実経済では、「販売する価格」を基にした市場全体の需要曲線は、供給者の数だけ存在しうることになる。

均衡モデルを現実経済に当てはめようとすると、解の存在しない連立方程式ができる

裁定取引などを考慮して、「販売する価格」が市場で一意に決まるとすると、「販売する価格」と数量に関して、現実経済が、式が変数より多い連立方程式としてあらわされることになる。そして、一般に式が変数より多い連立方程式を満たす解は存在しない。すなわち、均衡モデルを現実経済に当てはめようとすると、解の存在しない連立方程式ができてしまう。

*1:時間等も含む