政府の負債は、返す必要がないし、事実上返せない

政府の国債などの負債は、返す必要がないし、事実上返せません。念のため言っておくと、借り換えで繰延すればよいということで、踏み倒せということではありません。
MMTでいうところの主権通貨国であれば、政府の国債などの負債は、中央銀行が買い取ってしまえばすみます。発券銀行なのでいくら高額でも買うことが可能です。中央銀行が買い取った国債の元利の払いは自動的に国庫に納められます。すなわち、既に発行している政府の負債は、実質的に返済する必要が無いということになります。
政府の負債が事実上返せないというのは、どういうことでしょうか。それは、政府の負債を持つ債権者が無数に存在するということです。家庭の借金を返すのとは、ここが決定的に違います。家庭の借金の場合、対象となる債務者は、一人か少数で、債権者ははるかに巨大になります。そのため、債務者の行動は
ほぼ無視してさしつかえありません。債務者が返済するという行動が全体の経済に及ぼす影響は、ほぼゼロと考えていいでしょう。
それに対して、政府の負債を返す場合は、ほぼ、全ての個人や企業が、債務者になります。しかも、個々の彼らは、税の上からすると債務者ではありません。より高い税を納め、より少ない政府支出で我慢するよう義務付けられているだけです。資産の増加を抑制されているだけで積極的に資産を減らすことは要求されていないのです。もちろん、積極的に資産を減らす税制とすることは不可能ではないでしょう。しかし、それが税の公平さなどと両立する可能性は低いでしょう。
このように、個々の個人や企業が抑制されているとは言え、資産を増やそうとすれば、債権を増やそうとすれば、誰かが債務を増やす必要があります。結局それは政府の役割になります。このため、政府は財政赤字を続け、財政赤字は途切れることなく続くことになります。ごくまれに財政黒字になることがありますが、これは、バブルが発生して、不動産や株への投資が国債への投資より有利に思えるなど、例外的な状況においてのみおきることです。