いきなりのハイパーインフレという大嘘

MMT(Modern Monetary Theory,)の批判などを読んでいるとよく出てくるのが、いきなり、ハイパーインフレになって経済が収拾がつかなくなるという意見です。これは、はっきり間違いです。

いきなりのハイパーインフレと唱えている人々は、価格の仕組みを理解していません。いきなりのハイパーインフレとは、ほとんどの売り手が発狂して、価格を上げるということです。ほとんどの需要家の発狂と発狂した需要家による一致した価格上昇という、二重に非現実的な仮定をしています。

個々の需要家は利潤の最大化を目指す

個々の需要家は個々の利潤の最大化を目指しています。厳密には、利潤最大化の原理ではなく、満足化の原理にしたがいます。しかし、近似としては、利潤最大化の原理でかまいません。

高過ぎる価格は利潤を激減させる

高過ぎる価格は、個々の供給者の利潤を激減させます。利潤どころか、損失が生じることもあります。もちろん、低すぎる価格も、個々の供給者の利潤を激減させます。価格と予想される利潤は、一般に山形のカーブを描きます。したがって、個々の供給者は、利潤が最大になる付近の、程々の価格で売ります。

いきなりのハイパーインフレは需要家の狂的行動を前提にしている

いきなりのハイパーインフレとは、ほとんどの需要家が発狂して価格を上げるという、おかしな行動を前提にしてます。

個々の供給者にとっては、程々の価格で売ることが利潤最大化にしたがうことです。高過ぎる価格で売るということは、利潤最大化に反することであり、発狂したと見なされるでしょう。ほとんどの需要家が発狂するというのは、非現実的です。発狂した需要家が一致して価格を上げるというのも非現実的です。二重に非現実的です。

厳密には、天災や戦争、内乱など、環境が急変して、いきなりハイパーインフレになるリスクは、ゼロではありません。しかし、これらは、それらの環境急変だけでなく、それらを含めた全体について、回避、対処する必要があります。ハイパーインフレという、金銭的部分だけ取り出して対処しても、ほとんど意味はありません。