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生産性に関する錯覚

…もあります。経済学の比較生産費説は、生産量が生産性に依存するようになっていますが、そのような保証はありません。一般に、供給の数量が制約になっている場合は、生産量が生産性に依存します。逆に、需要の数量が制約になっている場合は、生産性が生産量に依存します。 広く一般的に使用できる生産量は、付加価値とかTOCのスループットくらいしか無い 広く一般的に使用できる生産量は、付加価値とかTOCのスループットくらいしかありません。例えば、売上は、流通経路で多重計算されてしまうリスクがありま…

特化することのリスク

しかし今、鉱業関連の建設の落ち込みと最近の鉄鉱石価格の下落が旗艦プロジェクトの将来を脅かすとの不安が高まっている。以前にも「特化することの反証」というエントリを書いたことがありますが、特定の産業に特化すると、その産業の好不調に依存するため、景気の好不況の振幅が激しくなるというリスクがあります。都市レベルの特化ですらこうなります。国のレベルで特化した場合、極めて深刻なものになります。リカードの比較生産費説は、こうしたことが考慮されていません。

リカードの比較生産費説の基本的な欠点

リカードの比較生産費説では、各々の国が比較優位産業に特化することで全体としては生産量が増えるので、それを貿易することにより、双方の国がメリットを得ることができると考えます。その比較生産費説について、「国内における分業を無視している」とか、欠点を指摘してきましたが、比較生産費説には、もっと基本的な欠点があることに気づきました。 比較生産費説の基本的な欠点とは、比較生産費説が供給不足を前提としているのに対して、現実の経済ではほとんどの商品(サービスを含む)は需要不足となっていると…

比較生産費説の錯覚(2)

「比較生産費説の錯覚」を要約するなら、リカードの比較生産費説の欠陥は、本来、別々のものとして扱わなければならない、ある産業における以下の三つが区別されていないことにあるということです。 その産業の従事者の生産性 その産業に従事していない人々が従事した場合の生産性 両者を一緒にした生産性 それぞれ、別の集団ですから、生産性は異なるものとして扱う必要があります。生産性を同じとして扱えるのは、実際に計測して同じだと証明した後になります。おそらく、コスト的に網羅的な実測は不可能でしょ…

比較生産費説の錯覚

…を飛ぶ」をまとめて、比較生産費説批判について整理し直します。 比較優位産業に特化することにより生産量が減る? イギリス ポルトガル 生産量合計 布(生産量) 1単位 1単位 2単位 布(労働者数) 100人 90人 布(生産性) 0.01単位/人 0.0111単位/人 ワイン(生産量) 1単位 1単位 2単位 ワイン(労働者数) 120人 80人 ワイン(生産性) 0.0083単位/人 0.0125単位/人 労働者数合計 220人 170人 リカードの比較生産費説では、上記の…

リカード論理ではクジラが空を飛ぶ

…」で述べたリカードの比較生産費説の論理的な間違いについてわからない人が多いようなので、説明を補足します。比較生産費説の論理が正しいとするとクジラは空を飛ぶことができることになってしまいます。 比較生産費説は、同じ国に住んでいる人々の同じ産業における生産性を同じだとしている 比較生産費説は、同じ国に住んでいる人々の同じ産業における生産性を同じだとしています。以下のような論理です。 X国の以前からA産業に従事していた人々はX国に住んでいる X国の以前はB産業に従事していた人々はX…

自由貿易には理論的根拠はない

…としているリカードの比較生産費説には論理的な間違いがある 先日のエントリでふれたように、多くの経済学者が自由貿易推進の理論的根拠としているリカードの比較生産費説には、論理的な間違いがあります。リカードの比較生産費説は国内における生産性の差を否定しており、経済学の教授とコンビニのアルバイトが同じ時給であるような社会を前提としています。もちろん現実はそうではありません。 比較優位産業に特化することで生産量が増えるという比較生産費説の主張 リカードの比較生産費説では、各々の国が比較…

特化することの反証

…積を重視する経済学者としてアルフレッド・マーシャル、ケネス・アロー、ポール・ローマーの3人を挙げている。一方、産業の多様性を重視する論者としてジェイン・ジェイコブズを挙げている。彼自身が20年ほど前に両者の主張を検証する実証分析を行ったところ、ジェイコブズに軍配を上げる結果が得られたという。 都市が特定産業に特化することがまずいなら、国が特定産業に特化することはもっとまずいはずであり、比較優位産業への特化はリカードの比較生産費説とは逆の結果をもたらしかねないということになる。

自由貿易には理論的根拠は無い

…根拠としてリカードの比較生産費説が挙げられることが普通だが、比較生産費説は自由貿易の根拠とはなりえない。なぜならば、比較生産費説は比較優位に基づく国際的分業が経済的利益をもたらすというものだが、自由貿易が比較優位に基づく国際的分業につながるかどうかは不明だからである。徹底した管理貿易ならば比較優位に基づく国際的分業を行うことは可能だが、自由貿易が比較優位に基づく国際的分業につながるかどうかは不明である。 自由貿易が比較優位に基づく国際的分業につながることが誰にとっても明らかな…