悪魔の見えざる手

「神の見えざる手」とはいったい誰が言い出した言葉なのだろう?
アダム・スミスが「神の見えざる手」という言葉を使ったと書かれていることが多いが、その根拠をきちんと提示しているものを見たことがない。「諸国民の富(国富論)」の中では、単に「見えざる手(invisible hand)」という言葉が、第四篇第二章において、ただ一箇所使用されているだけである。
市場が正しく作用するには、正しい情報を必要とする。「神の見えざる手」という言葉は、正しい情報は伝わりにくく、市場は正しく作用しがたい、ということを皮肉にも証明している。

#補足
現在最も入手しやすいであろう最新の岩波文庫版では、「みえない手」と書かれている。