ミクロ経済学には数学的基礎は無い

ミクロ経済学には数学的基礎はありません。ミクロ経済学に数学的基礎があると信じている多くの人々がいるに過ぎません。

例えば、供給曲線と需要曲線の交点で市場における価格と数量が決まるという部分均衡モデルを考えてみましょう。このモデルでは、価格と数量しか登場しません。しかし、現実の市場では、商品や人の移動等、取引に付随する様々な費用が、供給側にも需要側にも発生します。ミクロ経済学では、時間も費用として考慮する必要があります。

取引に付随する様々な費用が発生するため、それが無い部分均衡モデルは、本来、現実の経済にはほとんど適用できません。

このように言うと、「ニュートン力学では摩擦の無いモデルを使う、それとミクロ経済学で取引に付随する費用の無いモデルを使うのは同じだ」と反論する人がいるかもしれません。しかし、それは時間的順序を無視しています。

摩擦は、摩擦以外の力と同時に作用します。従って、摩擦が無いモデルに摩擦を追加することは、数学的に何の問題もありません。しかし、取引に付随する費用の無い部分均衡モデルに、取引の前に取引に付随する費用を割り込ませることは、一般に不可能です。計算の順序を変更することは、一般にはできません。数学的に言うならば、合成関数の交換法則は、一般には成り立ちません。

すなわち、部分均衡モデルや一般均衡モデルは、現実の経済を理解する数学的基礎にはならないということです。