2006-01-01から1年間の記事一覧

無視されているソフトウェアの価値の見積

ソフトウェア開発における見積と言うと、ソフトウェアの開発コストの見積ばかりが話題になって、それと同等に重要な見積が無視されていることが多い。それは、開発するソフトウェアの価値の見積である。ソフトウェアの価値がソフトウェアの開発コストより低…

プロセス改善がうまくいかない理由

ソフトウェア開発において、「プロセス改善に関する意見の食い違い」が起きる理由の一つは、「良いプロセス」というものが充分に明確になっていないことにある。 「本当に欲しいモノは顧客自身もよく判っていない」という要求に関する見解は、「プロセス」に…

要求は常に変化する

現実問題「要求の変化」が微塵も起こらないとでも思っているのだろうか。 システムが外部環境に対応したものである以上、外部環境の変化はシステムの変化をもたらしがちである。「要求の変化」が起こらないと考えるのは非現実的であり、単なる運任せにすぎな…

ソフトウェア工学原理主義者になるな

世間には「ソフトウエア工学」が学問として存在する。先に述べた原理や原則が存在しているはずだという前提に立ち,誰でも同じ答えが出るようにすることを目指すものである。こうした学問の成果として各種の規格やモデルが完成した。例えばプロジェクト管理…

QWERTY方式とネットワーク外部性

「市場は独占へと向かう(3)」で、キーボードのキー配列をネットワーク外部性の例として挙げたところ、それに対する批判があった。独占やネットワーク外部性について誤解があるように思うので、反論してみよう。 QWERTY配列はいくつかの大きな欠点がある。そ…

サラ金規制にみる完全競争市場の欺瞞

自由化による競争促進なら、貸金業者を今の許認可制でなく完全自由にするべきなんでは?これも事前規制なんでしょ?参入障壁だと思うけど。それより、誰でも自由にいくらでも貸せるようにした方がいいんじゃないの? 参入障壁を無くすと、悪質業者の排除が難…

事実は理論に依存する

冥王星が惑星から除外されるというのが、話題になっている。 http://slashdot.jp/science/06/08/24/1415236.shtml http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50608236.html http://njb.virtualave.net/nmain0212.html 惑星の定義が変われば、冥王星が惑星…

専門家だからこそ間違えることもある

「専門家の意見というのは、大抵は素人よりも正しい」が、常に専門家の方が正しいというわけではない。専門家も間違えるし、それだけでなく、専門家だからこそ間違えるという面があるからである。専門家は、専門家としてのパラダイムというか思考の枠組みに…

市場は独占へと向かう(3)

スケールメリットやネットワーク外部性について整理してみよう。 スケールメリットは、普遍的に見られる スケールメリットは、普遍的に見られ、それこそ物々交換の時代からあった。 第二次産業革命以後、経済においては、「規模の経済」が働くようになった。…

市場は独占へと向かう(2)

「市場は独占へと向かう」で引用した「自由市場は自殺する」の引用元である「Web2.0は自殺し、ゾンビーになって徘徊する」への批判がいくつか書かれている。だが、かなり誤解があるように思う。 独占状態が続いているならば、それは競争を挑み勝利するチャン…

市場は独占へと向かう

「NHK特集:「ラテンアメリカの挑戦」からの教訓」というエントリがあり、それに対して、「悪いのは、市場ではなく独占」という反論があった。独占が悪いのは確かだが、独占の芽自体は市場にある。規模の利益が作用するため、市場は独占へと向かう。「自由市…

フローチャートは設計の道具としては使えない

「フローチャートの力を思い出そう」という記事をきっかけにフローチャートが一部で話題になっているようだ。並列処理とかでなければ、フローチャートは設計した結果を記述するのには使える。 たとえば、プログラマーじゃない管理者層の人に、プログラムにつ…

他人にコミュニケーション能力を求める者はコミュニケーション能力が乏しい

「システムを開発する技術者は、コンサルタントを目指すべし」くらいの勢いで主張されるかたも多いし、日経BP 等の Web ページを見ていると、技術者にとって必要なスキルはコミュニケーション能力だ、という主張ばかりが目立つ。確かにコミュニケーション能…

反現実的な経済学

完全競争市場は現実の経済を理想化したものではない 主流派経済学の主張することが現実と全く異なるということをいくつものエントリで批判してきた。現実と全く異なる原因は、主流派経済学が想定している完全競争市場が現実の経済を理想化・抽象化したもので…

生涯一エンジニア

「40歳を超えたエンジニアは何処へ行く」なんて考えること自体が、日本のエンジニアの不幸な現状をあらわしていると思う。 頭脳で勝負すればいい専門職に年齢的限界は本来存在しない。小説家や漫画家が60歳、70歳で現役であっても誰も疑問に思わない。会社組…

ITエンジニアの給料が安い理由

ITエンジニアが足りないらしい、でも、ITエンジニアの給料はサラリーマン以下だという。これって矛盾してますよね。だっで、ITエンジニアが足りないなら給料を増やしてでも確保しようとするのが市場の原理でしょ。 矛盾していない。安い労働力としての「ITエ…

プロになることを妨げるソフトウェア工学

プログラマの収入が増えない大きな理由に「プログラマという視点から抜け出せない」があると思う。会社に雇用されている。会社から給料をもらっている。そのような視点で考えて仕事をしていたら収入は増えることは無いと思うのだ。 会社に対して価値を提供し…

動かない方がまだマシ

動けば問題ないと考える風習は撲滅せねばと心底思います。 全くそのとおり。「動けば問題ない」などというのは素人以下の戯言である。「動けば問題ない」という意識だと、動くべきでない時に動かないことがほとんど保証できない。動くべき時に動くことは重要…

社会的評価の低さ

金が全てでは無いが……。 http://image.blog.livedoor.jp/dqnplus/imgs/7/8/7814e50e.jpeg 「プログラマはサラリーマンより低い」という現状では、「IT人材育成で日本はがけっぷち」と訴えても、どこまで本気なのかと疑わしく聞こえてしまう。 金に限らず、名…

十年一日のごとく進歩なし

「1秒でわかるアホソース」というエントリを読んで、「Cプログラミング診断室」を思い出してしまった。ソフトウェア開発は十年一日のごとく進歩していないという実態をあらためて見せ付けられた気がする。

ソフトウェア工学の功罪

「プログラマにソフトウェア工学の知識は必須である」ことに異論はない。だが、ソフトウェア工学には大きな欠陥がある。 学問に厚みが足りないのであれば厚みを足せばよいのです。 「学問に厚みが足りない」のであれば、それでいいのだが、余計なところに有…

コンピュータ性能の合成の誤謬

「今後のOSに望むこと」というエントリに以下のような希望が書かれているが、まず叶いそうにないない。 Java VMや.NET CLRを、カーネルに入れてほしい。もちろん、インタプリタでは話にならない。動的コンパイルされたコードが、カーネルモードで動かせるよ…

ソフトウェアの複雑さ

結城さんが、「ソフトウェアは、私たちの想像よりもずっと複雑」と書かれている。ソフトウェアが想像よりも複雑という印象を与えるのは、以下の2点の原因によると思う。 構成要素当たりで考えると、ソフトウェアは広義のハードウェアよりはるかに複雑な人工…

一般均衡モデルという統制経済モデル

同じ商品とはどういうことか 同じ商品に価格差があれば、安い方で買って高い方で売る裁定取引が行われ、価格差が収斂していく。だが、「同じ商品」と見なすのか否かという問題がある。 さて、結局どうなるかと言うと、太郎がどんどんと人市からミカンを運ん…

オブジェクト指向が役に立たないことはある

「脱オブジェクト指向のススメ」というエントリに批判が集中している。 http://d.hatena.ne.jp/JavaBlack/20060608#p1 http://d.hatena.ne.jp/methane/20060608 http://d.hatena.ne.jp/moto0215/20060609/1149818177 http://d.hatena.ne.jp/tonotonotono/200…

デフレの影響

「数字の大きさ」というエントリで、デフレの心理的効果の話がでていた。だが、デフレの影響を考える時、難しく心理的効果を考える必要はないし、賃金の実質的価値だの賃金の下方硬直性だのを考える必要もない。デフレやインフレにより時間の経過に伴い価格…

経済学は物理法則を無視している

経済学、特にミクロ経済学における均衡モデルに対する批判を以下のエントリのコメントで述べた。以下の批判を含め、これまでの批判を整理し直してみよう。 http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/bcccd3de29be913b30d06bbbf634809f http://blog.goo.ne.jp/c…

超越的存在について言及してしまう実在論

「非実在論とは」に対する批判として、「無矛盾性だけでは足りない」というエントリが書かれている。だが、事実誤認もあり、ほとんどの点で合意できない。 「非実在論」と自称したことは無い しかし、いくらなんでも「実在論以外の存在論の総称」の中に、全…

日本はさほど水の豊富な国ではない

15日の日本経済新聞朝刊の特集「人口減と生きる」の中で、「日本には水が豊富にある」という言葉が出てきた。だが、これは思い込みに過ぎない。確かに、気象で言うところの降水量で見れば、日本は世界有数の降水量の多い国である。梅雨と台風、そして冬の日…

非実在論とは

「実在論とは」に対して批判があった。 「人間の認識と独立した存在の真偽は不明」である。しかし、不明であるならば、真か偽が分からないということであり、であるならば、実在論に立つべきか非実在論に立つべきか分からない、となるのが筋である。にも関わ…